現代脱藩論

大企業からスタートアップの世界へ脱藩したEX-IBMer。テクノロジーでパラダイム・シフトが起きようとしている中で、スタートアップやビジネスデザイン、アプリ開発などを私的見解とともに書きます。

幕藩体制と武士の関係性に見る現代社会との関係

幕藩体制と武士の関係性

前々回のブログで「脱藩」という言葉は、”今ある枠組みを越えよう”という意味、と書きました。

 

もう少しわかりやすくするために、昔の武士と藩との関係性から現代の意味を解釈してみようと思います。

 

江戸幕府は平和な政権がおよそ200年以上も続いた、世界でも稀な時代です。徳川は1603年に征夷大将軍に任命されてから1868年に大政奉還されるまで、戦いのない時代を作り上げました。

 

日本はこの時代に今の政治や社会に通ずるところの基礎を築き上げました。

 

日本の国としての基礎は戦後でも、明治維新でもなく、さらには自民党でもなく(笑)、私はこの江戸時代に形成されたと思います。日本人としての気質や、礼儀、教育含めて、です。

 

実はあまり気づかないかもしれませんが、日本は未だにその延長にいます。

 

江戸時代から続く悪しきものもあるのですが、これはまた別の機会にでも書きます、「徳川の呪縛」とでも題して。笑

 

さて、江戸時代の終わり、日本人のアイデンティティを作っていたのは幕藩体制と武士です。日本人をどう表現するか、という問いに対する答えは新渡戸稲造が武士道で書いています。このあたりも深掘りすると面白いのですがまた今度に。

 

アイデンティティを形成していた幕藩体制と武士との関係性が希薄化していた当時、黒船により脆くも崩れ落ちて明治維新という流れが生まれました。

 

現代の労働と日本人のアイデンティティ

では今の日本人のアイデンティティを形成しているものは何か。

 

それは会社とサラリーマンの関係、すなわち働くということです。会社に所属し働けば身分を保証し、健康保険や年金の支払いも会社を通してやってくれます。

 

いつからか会社に帰属し「労働」することが、その人の人生そのものをアイデンティティ化することになりました。

 

(この辺りは、宮崎駿監督作品の千と千尋の神隠しを見てください。)

 

さて、マルクス経済が成り立つこの世の中では上記の考えが当たり前になっています。

そして、エリート教育をうたう進学校教育は良い大学、良い会社で働くことが全てだと教え込みます。

 

では良い会社に所属して仕事をしていれば、将来安泰なのでしょうか?会社に所属していればやり甲斐を得られるような幸せは待っているのでしょうか?

 

私はそうは思いません。

 

テクノロジーの観点で言えば、既存のルール、制度は全て一昔前のもので、だんだんとそこに歪みが生じ始めています。

 

テクノロジーが破壊し始めた会社と労働者の関係

 LinkedInなどの登場によりキャリアはオープンになり、流動性が高まってきました。

 

また働き方や仕事自体もソーシャルネットワークで拡散されるようになり、もっと働きがいのある会社に人材が集まって行くようになりました。

 

今後は社会保証や年金も国に丸投げする時代は終わり、自分たちで責任を持つ時代に突入すると思います。

 

そうすると飽和状態の経済と、給料が低い若い世代は、自然とやりがいや将来を見据えて仕事を複数持つような時代になります。

 

これによりピラミッド型に支配されていた雇用者と被雇用者の関係性は徐々に崩れ始めます。

 

会社でのし上がるのではなく、幸せに生きることへのシフトです。会社にのし上らずともソーシャルやコミュニティで承認欲求を満たせるのでこちらの生き方の方が生活の質が向上できると気づき始めたのです。

 

さらには会社で働くということ以外にも、個人でブログを書いたり動画をアップしたり、コンテンツを創るだけでなんらかの社会との関係性を持てるようになり、承認欲求を満たせるような時代となりました。

 

もはや会社で働くという日本人を形成していた求心力は薄まりました。

 

これはあたかも幕藩と武士との関係性が希薄化し、その幕府が倒れたように、その歴史が繰り返される前兆にあるように見えます。

 

未来は予測できないということを認知する

いまビジネスの現場で、自分の会社や自分の組織のみの数字を追ってる方は次の時代に何が起きるか予測できないでしょう。

 

想像できない、といったほうが正しいかもしれないです。未来を予測することは当然難しいのですが、これからは少なくとも「未来は予測できない」ということをきちんと「認知」しないといけません。

 

これからの社会やビジネスは、今までの延長ではダメで、新しい枠組みをみんなで作るという新しいムーブメントや取り決めが必要なのです。

 

デジタルテクノロジーを甘く見すぎた日本 

これらを打破するためにも、テクノロジーを活用しなければならないのですが、日本はテクノロジーを甘くみすぎました。

 

テクノロジーに投資した国はしっかりと人材が育っています。しかしながら日本は、デジタルに関するテクノロジーは、士農工商でいうと(古過ぎるかもですが笑)、工商程度にしか見てません。

  

政府の人工知能や最新のテクノロジーに関するお金の額や取り組みを見ていてもこれは明らかです。

 

この問題は非常に根深く、教育などの問題もありますが、それはまた別の機会に書きます。笑

 

パラダイムシフトを乗り越えるためには、テクノロジーとともに社会、政治、経済などを複合的にみなければなりません。

 

幕末の武士が自分たちを守ってくれていた唯一の存在である藩を投げ出してまで新しい枠組みを作ったかのごとく、いまある既存のものを否定し、新しい時代を創造する発想と行動がいま求められているのです。

 

それぐらいのインパクトを持つ黒船が、AI, ブロックチェーン, AR/VRなどのテクノロジーなのです。

 

テクノロジーの黒船を活かすも殺すもリーダー次第

この黒船を取り込んで、新しいことを成すことがいまのリーダーに求められています。

 

この世界では過去の成功体験や、一般的な理論は通用しません。

 

ビジネスで言えば10を100にする力ではなく、これからは0から1を創れる人が必要なのです。

 

それは「問題を解ける人材」ではなく、「問題を設定できる人材」です。

 

みなさんの会社にテクノロジーに精通する右腕人材はいらっしゃいますでしょうか?デザイナーやアートの発想でビジネスを創造する人はいますでしょうか?

 

こういった人材を育てる施策をしているでしょうか?

 

皆さんの会社のリーダーは数字ばかりを追うコテコテの営業出身の人ばかりではないでしょうか。

 

幕末の志士たちは、外の世界とつながり新しい時代を創造しました。外の世界で何が起きているか、その情報感度を高め、お互いにスキルを付け合いながらゲーム・チェンジを起こしました。

 

前職では、そういったコミュニティー活動や現場を目の当たりにしているので、今後時代が変わるということを肌で感じています。

 

繰り返しになりますが、時代は変わります。黒船を活かすも殺すも、リーダー次第。